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『ミュウツーの逆襲』考察~ミュウツーはなぜ「優しくない」のか?~

7月12日から、ポケモン映画ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』が全国の映画館で上映されますね。この映画は、1998年に上映された『ミュウツーの逆襲』が3DCG映像にリメイクされたものです。『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』の脚本は首藤剛志さんが書いたそうですが、首藤さんは今はもう故人です。おそらく『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』の脚本は生前の首藤さんが昔書いたオリジナルのまんまで、変わってない可能性が高そうです。

 
今回から、1998年に上映されたオリジナル版ミュウツーの逆襲』の見どころをご紹介します。この考察が、来月から上映されるリメイク版を鑑賞するための予習になれば幸いです。できるだけ、今まであまり指摘されてこなかった見どころを皆さんにお伝えしたいと思います。オリジナル版をもう観たことがある方でも、別の観点からリメイク版を楽しめるようになる考察に…なってたらいいなあ(苦笑)。
 

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ミュウツーの逆襲』
監督:湯山邦彦
脚本:首藤剛志
(C)ピカチュウプロジェクト98
1998年7月18日公開
おすすめ度:★★★★★(エンタメ・子供向けの枠組みを超えた傑作)
 
ミュウツーの逆襲』は、遺伝子組み替え技術によって誕生したポケモンであるミュウツー、エゴによって自分を生み出した人類に「逆襲」するという内容の映画です。映画の後半では、ミュウツーたちコピー(クローン)ポケモンとミュウたちオリジナルポケモンが、自らの存在を賭けた痛々しいバトルを繰り広げます。この映画のシナリオは「オリジナルとコピーの対立」を重要な軸にしつつも、オリジナルかコピーかに関わらず命の尊厳を肯定するものです。
 

「私は誰だ?」と問う理由

 
ミュウツーは、『ミュウツーの逆襲』の作中で「私は誰だ?」と何度も自問します。ミュウツーは、なぜ自分の存在について考えるのでしょうか。その理由を思い付くだけ挙げてみます。
 
理由1:ミュウツーが思考力に恵まれているから
 

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ミュウツーピカチュウとかとは違って人語を操ることができるし、とても頭がいいポケモンです。私たち人類は、言語を使ってものを考えます。ミュウツーはものを考えるのに便利な道具である言語を使えますし、もともと頭がいいので思考力に恵まれた存在です。ミュウツーは思考する才能があるポケモンだから、「私は誰だ?」という哲学チックな思索にふけるのでしょう。
 
理由2:ミュウツーの存在理由があやふやだから
 

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もしもミュウツーカイオーガカプ・テテフのように「恵みや厄災」のあるポケモンだったら、ミュウツーは「私は誰だ?」と悩まずに生きられたかもしれないなと思います。例えばカイオーガはその場に存在しているだけで大雨を降らせるポケモンですし、カプ・テテフは鱗粉を振り撒いて戦争を終わらせた伝承が残っているポケモンです。同じ伝説のポケモンでも、カイオーガやカプ・テテフなどはただ存在しているだけで周囲に恵みや厄災をもたらすことができるので、存在理由がわかりやすいです。でも、ミュウツーはただ居座っているだけでは恵みや厄災がないので、存在理由がわかりにくい奴なんですよね(苦笑)。*1
 
理由3:ミュウツーは最強を追求しなければならないから
 

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ミュウツーは人類に反旗を翻しましたが、最強のポケモンを作りたいという人類の欲望はミュウツーの性格に大きな影響を与えました。ミュウツーは自分が最強のポケモンであることに強い拘りを持っており、コピーがオリジナルよりも強いことを証明しようとします。実際にミュウをはじめとするオリジナルのポケモンと戦って勝たない限り、ミュウツーをはじめとするコピーポケモンが本当に強いかどうかはよくわからないので、最強を証明するためには厳しい決闘をする覚悟が必要です。どんなに自信があっても自分が最強であることを立証するのは生易しいことではないので、ミュウツーは「私は誰だ?」と悩み続ける運命にあるのだと思います。
 
理由4:ミュウツーは万能の存在だから
 

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ミュウツーは自らの意志で人の心や天候を操る能力を持つ、万能の存在です。私たち人間はミュウツーのように万能の存在ではないので、様々な挫折を繰り返して大人になります。心理学の本とかには、「挫折したり、社会参加したりしながら人は自分を知るものだ」みたいなことがよく書いてありますよね。失敗したり他者と協調したりすることはパーソナリティを形成するいい機会になると思うんですが、ミュウツーは万能だし思いやりに欠ける性格です。万能だから、かえって自分がわかりにくいんだと思います。
 

ミュウツーが「優しくない」理由

 

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ゲームのポケモン図鑑ミュウツーの項目を見ると、人間の科学力で体はつくれても優しい心をつくることはできなかった」と書いてあります。確かにゲームのミュウツーだけでなく、『ミュウツーの逆襲』のミュウツーも優しくないです。人間の科学力に限界があったり、ミュウツーに憎悪の感情があったりするから、ミュウツーは優しくないんだと思います。また、『ミュウツーの逆襲』のミュウツーの関心事は自分の存在であり、あまり他人を思いやることがないので優しくないとも言えそうですね。
 
ミュウツーポケモンでもあり人間でもあり神でもあるような存在だし、ポケモンでもなく人間でもなく神でもないような存在だと思いますこの「全能感と中途半端さが両立している感じ」ミュウツーの個性になっていて、そこが『ミュウツーの逆襲』という映画のおもしろさに繋がっていると私は思っています。
 
次回も『ミュウツーの逆襲』の考察を書く予定です。また、『ミュウツーの逆襲』の続編である『ミュウツー!我ハココニ在リ』では、ミュウツーの性格がかなり丸くなっています。その心境の変化についてもこれから書いていきたいです。

*1:ゲーム版ポケモンミュウツーには「プレッシャー」という特性がありますが、ただ相手にプレッシャーを与えるというだけでは、存在理由として弱いでしょう。