かるあ学習帳

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『仮面ライダーリバイス』のデザインとヴェイパーウェイヴの関係性

本論では、仮面ライダーバイスのデザインとヴェイパーウェイヴの関係性を考察する。
 
仮面ライダーバイス』は、令和3作目の仮面ライダーである。『リバイス』の主人公・五十嵐一は、悪魔・バイスと契約して仮面ライダーに変身する。二人で一組の仮面ライダーリバイ&バイスは、敵の悪魔たちと激闘を繰り広げる。最近は『チェンソーマン』『呪術廻戦』みたいに悪魔や怨霊が登場するヒット作が出たので、『バイス』はその流行に便乗した内容になっているらしい。*1
 

しかし私はこの『リバイス』を、ハッキリ言ってイマイチ好きになれなかった。なぜかと言うと私は、NHKの朝ドラのような世界観と「悪魔」という題材が上手く調和していないと思ったからだ。主人公・一輝が「しあわせ湯」という銭湯の後継ぎなので、『リバイスの舞台は温かい銭湯を拠点にしている。そしてロケ地は昼日中の日常風景が多く、その演出は観ていてNHKの朝ドラを彷彿とさせる。しかしこの人情溢れる昼日中の日常」と「悪魔という邪悪な存在」が上手いこと馴染んでいないと思えて、私は観ていて違和感を覚えた。
 
以上の理由で私は『リバイス』があまり好きではないのだが、バイス』のキャラクターデザインは面白いと思っている。なぜなら『リバイス』は、仮面ライダーのデザインにヴェイパーウェイヴの意匠を採り入れた作品だからだ。
 

仮面ライダーとヴェイパーウェイヴの「科学反応」

ワールドフォトプレス社から刊行されたフィギュア王とかいう雑誌がある。この雑誌の297号は、『リバイスの特集である。この特集によると、キャラクターデザイナーの山下貴斗さんは、ヴェイパーウェイヴを参考にして作中のデザインを考案したという
 

『ヴェイパーウェイブ』という音楽のジャンルがありまして、そのイメージカラーがこういう色合いなんです。80年代の音楽を今風にアレンジしたような感じなんですけど、すごく爽やかでかっこいい。そこに郷愁とか懐かしさが融合していて。企画当時はこのジャンルにハマっていて、それがダイレクトにデザインに反映された格好です(笑)」(山下)
 
では、ヴェイパーウェイヴ(ヴェイパーウェイブ、vaporwave)とは何なのかを、私なりにざっくりと説明しよう。ヴェイパーウェイヴとは、80~90年代の商業BGMなどを流用し加工し、再構築して作られる音楽である。また、ヴェイパーウェイヴはグラフィックデザインの領域も開拓しておりパステルカラーがよく用いられる。私の説明は音楽ガチ勢から見たら粗雑すぎると思われるだろうけど今回は大目に見てくださいお願いします。
 

さて、GoogleYoutubeでヴェイパーウェイヴを検索した後で、仮面ライダーリバイ&バイスの着ぐるみ(スーツ)のデザインを見てみよう。確かにこの着ぐるみにはピンクや水色、紫のような「ヴェイパーウェイヴでよく見られる色」が多用されていることに私たちは気付く。さらにキャラクターデザイナーの山下さんは、パステルカラーに「黒を差し色として入れた」と語っている。
 

主人公ライダーにはヴェイパーウェイブ風のカラーを全面的に使っインパクトを狙ったんですけど、コーラルピンクってかなり淡い色なので、いつものノリでデザインするなら差し色として“黒”を入れて締めるんですね。でも、今回は意図的にそういう風にはしていなくて。黒を一ヶ所も使わない、ぐらいの気持ちでデザインしているんです。というのも、今回2人のライダーが並び立つのは間違いないので、悪魔ライダーのほうに差し色の“黒”を入れようという計算です。差し色は横に立っている(笑)。2人で完成するカラーリングというわけです」(山下)
 

山下さんの説明を考慮すると、仮面ライダーリバイ&バイスの着ぐるみのデザインがよく練られていることに気付かされる。主人公・一輝が変身する仮面ライダーリバイには、パステルカラーがふんだんに塗りたくられている。しかしパステルカラーだけでは主人公の印象が薄くなるので、「差し色」として黒い悪魔を脇に添える。悪魔が変身する仮面ライダーバイスは全身が黒いので、リバイとバイスが二人で並んだら絵面が引き締まる。ほお〜ん、すげえwwよく出来たデザインだなあ〜。
 
私は『リバイス』を観て、「人情溢れる朝ドラのような世界観と悪魔という題材が上手く馴染んでいない」と思った。しかしキャラクターデザインに関して言えば、ほんわかしたパステルカラーと黒い悪魔を同居させることにより、独自のカラーコーディネートに成功している」ことを私は前向きに評価したいと思う。
 

変身ベルトにも反映された「ヴェイパーウェイヴの美学」

なんとこの『リバイス』とかいう作品は、仮面ライダーの着ぐるみだけでなく、変身ベルトにもヴェイパーウェイヴの理念を採り入れている!
 
変身ベルト「リバイスドライバー」にもヴェイパーウェイヴ風のパステルカラーが用いられており、さらに90年代に流行った「スケルトンボディー」も採用されている。90年代にはゲームボーイカラーやたまごっち、MDのように「透明な素材を使った」機器がよく売れた。山下さんは90年代のスケルトンブームを再評価し、変身ベルトにクリア素材を採用したのである。
 
「レトロプロダクトのイメージも個人的には入れたいなと思って。イメージでいうと90年代ぐらいのスケルトンブーム。ゲームボーイとかマッキントッシュのPCにもクリア素材が使われていましたけど、あの頃のカラー&クリアな感じを狙っています(山下)
 

さらに『リバイス』の作中では、登場キャラがバイスタンプ」とかいう変身アイテムを使う。このスタンプには、恐竜やマンモスのような絶滅動物が刻まれていることが多い。なぜなら、「過去に絶滅したものをモチーフにしたい」とプロデューサーが提案したからだそうだ。
 

「望月さんから頂いた当初のモチーフは“過去のもの”ということでした。古いもの、廃れたもの……文化とか、黒電話とか、そういう消えていったもの、なくなったもの、みたいなものをモチーフにできないか?ということで」(山下)
 
ヴェイパーウェイヴでは古き良き時代の文明が、音楽やデザインに再利用される。今では古く、絶滅した創作物が、現代で流用され再構築される。流用し再構築するヴェイパーウェイヴの理念が、『リバイスではライダーの着ぐるみだけでなく変身アイテムにも反映されているのである。
 

仮面ライダーバイス』、デザインに関して言えば、とても面白い作品だったと思うよ、俺は。
(C)2021 石森プロ・テレビ朝日ADK EM・東映

*1:『リバイスが『チェンソーマン』などの影響を受けていることは、後述する『フィギュア王』297号に書いてあった