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逆転裁判シリーズの歴史を語る~『蘇る逆転』から『大逆転裁判2』まで~

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今回は、逆転裁判シリーズの歴史を私の独断と偏見で語っていきたい。逆転裁判シリーズの魅力を客観的・中立的な語り口で紹介する記事は、既に他の方々が数多く書いている。だから私は逆転裁判シリーズの歴史を、あえて独断と偏見に満ちた語り口で書いてみたいと思う。
 
(!!!ここから先は独断と偏見とネタバレが過剰に含まれています!!!

 

 
 
 
 

逆転裁判シリーズ11作品を振り返る

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評価:★★★★★
 
『蘇る逆転』は、逆転裁判シリーズの原点であり頂点と言える作品だ。証人の証言を崩す快感、個性的な登場人物、窮地から逆転する爽快なストーリー。逆転裁判は第1作の時点で完成されきってるなこれ、と言わざるを得ない。『蘇る逆転』の真犯人は大企業の社長や映画界のおエラいさんなど、倒し甲斐のある権力者が多いところもいい。ちなみに『蘇る逆転』は、裏読みすると「オトナの世界」を一貫して描いた作品だったと解釈できると思う。
 

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評価:★★★★☆
 
逆転裁判2』は、「成歩堂三部作」の中間に位置する作品である。第2話「再会、そして逆転」は、次回作『逆転裁判3』への伏線を張った。また、第2話から初登場する狩魔冥は、『蘇る逆転』に登場した伝説の検事・豪の娘である。第4話「さらば、逆転」では狩魔流の「カンペキな勝利」を手放した御剣の心の成長が描かれ、冥も豪の呪縛から解放される。第4話は、強大な〈父親〉である狩魔豪から検事たちが自立する過程が描かれる「父殺し」の物語だ。逆転裁判2』は前作『蘇る逆転』の業=カルマを清算し、次回作『逆転裁判3』へのバトンを渡す、陰鬱な中継地点だったと思う。
 

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評価:★★★★★
 
逆転裁判3』は、「成歩堂三部作」の完結編である。前作『逆転裁判2』では狩魔家の因縁に終止符が打たれたが、『逆転裁判3』では綾里家の因縁に終止符が打たれる。第5話「華麗なる逆転」では、ゴドー検事によって千尋と真宵の〈母親〉である舞子が殺害される。そして綾里家の家元は、子を持たず〈母親〉ではない真宵に受け継がれる。そう、『逆転裁判2』は「父殺し」の過程を描いた物語である一方、『逆転裁判3』は「母殺し」の過程を描いた物語なのだ。第5話で春美の〈母親〉であるキミ子の陰謀も挫折したため、そういう意味でも『逆転裁判3』は「母殺し」の物語だと言っていいだろう。
 

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評価:★★☆☆☆
 
逆転裁判4』にはパンツ泥棒やハミガキ男など、二度と見たくないくらい気持ち悪い登場人物が登場する。しかし、見ていて最も辛くなるのは、弁護士をクビになった成歩堂の姿だろう。あの成歩堂がねつ造した証拠品を提出し、だらしないニートのような姿になるなんておかしいよ…。みぬきの〈父親〉である成歩堂裁判員制度の司会を行い、みぬきと王泥喜の〈母親〉による投票でラスボスが倒される結末も盛り上がりに欠ける。逆転裁判2』が「父殺し」の物語で『逆転裁判3』が「母殺し」の物語だったのに対して、『逆転裁判4』は〈父親〉と〈母親〉の力に頼って事件を解決する話になっていた。主役たちが親からの自立に失敗している」という意味でも、『逆転裁判4』は「失敗作」だと言えるだろう。
 

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評価:★★★★★
 
逆転検事』は、期待せずにプレイしてみたらとても面白かった。逆転裁判シリーズ生みの親である巧舟が制作に関与していないのに逆転裁判シリーズらしい「嘘を暴く快感」「軽快なギャグ」がしっかりと盛り込まれている。過去作をプレイした人ならニヤリとしてしまう小ネタ、過去作の人気キャラの続々再登場など、逆転裁判シリーズへの深い理解が感じられる名作だった。
 

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評価:★★★★☆
 
逆転検事2』は、過剰なまでの伏線回収と「父殺し」に満ちた作品である。この作品には御剣検事の父である信や狩魔冥の父である豪など、数多くの〈父親〉が登場する。しかし彼ら〈父親〉の殆どは様々な事情で死亡し、還らぬ人となってゆくのである。『逆転検事2は第3話と第4話の時点でまるで最終話のような盛り上がりを見せるのだが、最後の第5話で私には辟易する程の伏線回収劇が発生する。逆転裁判2』で義父のような存在である豪を克服した御剣は、『逆転検事2』で実の父である信からの自立も果たした。御剣の「父殺し」は、『逆転検事2』で完遂されたといえよう。
 

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評価:★★★☆☆
 
レイトン教授VS逆転裁判テン年代序盤である2012年に発売されたのだが、テン年代を象徴するかのような想像力に満ちた作品であった。レイトン教授成歩堂異世界を冒険するストーリーは、テン年代から流行した異世界ものの先駆けであろう。そして壁に包囲されたラビリンスシティの世界観は、『進撃の巨人』や『約束のネバーランド』を想起させる。魔法使いや物語内部の登場人物を描いたメルヘンなシナリオは、『魔女こいにっき』『紙の上の魔法使い』に似ている。ファンタジーを根本から破壊する異常に現実的な結末は好きになれなかったけれども、テン年代の流行を予見するかのようなセンスの良さは評価されるべき作品だ。
 

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評価:★★★☆☆
 
逆転裁判5』は、不朽の駄作『逆転裁判4が遺した暗黒を浄化するような作品であった。逆転裁判5の作中では、「過去が闇に包まれていても、俺たちはその暗闇から明るい未来に飛び立つことができる」というメッセージが色濃く打ち出されている。おそらく『逆転裁判5』の制作スタッフは前作『逆転裁判4黒歴史だと思っていて、その黒歴史から這い上がろうとする制作側の苦心がシナリオに反映されているのだろう。
 

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逆転裁判5』のラストでは、宇宙ロケットの打ち上げが成功する。宇宙ロケットの発射からは、ひとまず「苦しい過去の重力に抵抗し、栄光に満ちた未来へと旅立つ」というメッセージを読み取れる。さらに突っ込んだ考察をすると、宇宙空間というのは、私たちが普段生活する日常空間とは異なる「非日常」であり「異空間」である。逆転裁判5のロケットが宇宙へと旅立ったように、逆転裁判シリーズの物語も「非日常」と「異空間」へと主な舞台を移していく。
 

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評価:★★★★☆
 
大逆転裁判』の主人公は成歩堂龍一の祖先・龍ノ介であり、物語の舞台は過去の明治時代である。主人公が祖先で、物語の舞台が過去に遡ったのは、意地の悪い推測をすればする程面白い現象である。逆転裁判シリーズの初代主人公である成歩堂龍一はあまりにも強力な主人公なので、龍一を超えられる後継者や子孫はなかなか現れないだろうと思う。物語の舞台を未来にすると、龍一を超える存在感のある主人公を打ち立てるのは難しい。だから物語の舞台が過去に遡り、主人公が龍一の祖先になったのではないかと思われる。大逆転裁判』第5話の立体視とオルゴールを使ったトリック、俺は大好きやで。
 

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評価:★★★★☆
 
逆転裁判6』は異色作でありながら、逆転裁判シリーズの集大成と言える作品だ。逆転裁判6の物語の舞台は弁護士の肩身が狭いクライン王国で、霊媒を利用した裁判や犯罪が発生する。弁護士不在の架空の国家という舞台設定や、過剰すぎるオカルト要素は、明らかに人を選ぶだろう。しかし、この舞台設定のおかげで、弁護士の必要性や最後まであきらめないことの大切さがよく表現されていたと思う。そして、裁判で霊媒を活用することにより、曖昧な証拠を叩き台にして話し合いをすることの重要性も表現されていた。「弁護士不在の架空の国家を描いたディストピア物語(あるいは思考実験)」として割り切って読めば、実に面白い作品だったと言えるだろう。
 

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評価:★★★★☆
 
大逆転裁判2』は、不完全燃焼気味だった前作『大逆転裁判の伏線を綺麗に回収した名作である。黒幕に意外性が無いのは残念だったけど、シリーズの最後に本当に良い作品が出てきたなあと嬉しくなった。現代人には疎遠な言葉になりがちな「冒険」と「覚悟」を、過去を舞台にして華麗に描いたタクシューに感謝したい。そして豊かな現代を築き上げた過去の先人たちにも感謝したくなる超良作。
 

「前期逆転裁判」と「後期逆転裁判」について

逆転裁判シリーズの歴史を、私は勝手に「前期逆転裁判」と「後期逆転裁判」に分けている。私の分類では、『蘇る逆転』~『逆転検事2』までが「前期逆転裁判」で、『レイトン教授VS逆転裁判』~『大逆転裁判2』までが「後期逆転裁判」である。「前期逆転裁判はグラフィックが2Dで、物語の舞台が現代日本で、「親殺し」がキーワードになっていると思う。「後期逆転裁判はグラフィックが3Dで、物語の舞台が異空間に移行しており、「冒険と覚悟と革命」がキーワードになっていると思う。
 
・前期逆転裁判について
逆転裁判シリーズは、初期三部作である『逆転裁判123の完成度が高すぎると思う。逆転裁判123は病的なまでに良く出来た作品であり、『逆転裁判3の時点で物語は綺麗に完結している。そのため、いくら作品を生産しても初期三部作を超える作品はあまり生まれず、どの新作も初期三部作の蛇足だという気がしてしまうほどだ。
 
逆転裁判123』は推理小説として出色の出来なのだが、裏読みをすれば「親殺し」を描いた一連の物語として読めると思う。逆転裁判1』では、狩魔冥の〈父親〉である豪が退場した。『逆転裁判2』では、御剣と冥が強大な〈父親〉である豪の呪縛から解放された。『逆転裁判3』では、由緒ある母権社会の〈母親〉である舞子とキミ子が破滅することになる。
 
逆転裁判4』はみぬきの〈父親〉になった成歩堂とラミロアという〈母親〉がラスボスにトドメを刺すという、「親殺し」という観点からすると興味深い結末になっている。『逆転裁判123』は「親殺し」に成功した傑作である一方、『逆転裁判4』はラストで親に依存した駄作である。『逆転検事2は、「父殺し」を過剰なまでに遂行した逸品であった。以上の理由から、「前期逆転裁判」では「親殺し」がキーワードになっているというのが私の見解である。
 
・後期逆転裁判について
『蘇る逆転』~『逆転検事2』までの「前期逆転裁判は全てグラフィックが2Dであり、物語の主な舞台が現代日本である。しかし「後期逆転裁判になるとゲームハードが3DSに移行し、物語の主な舞台が異空間に移っていく。レイトン教授VS逆転裁判』の舞台は異世界であり、『逆転裁判6』の舞台は架空の異国であり、『大逆転裁判1&2』の舞台は過去のイギリスである。『逆転裁判5の舞台は現代日本なのだが、ラストでは宇宙という非日常空間への飛躍が表現されていた。
 
逆転裁判6』では成歩堂たちがクライン王国を冒険し、弁護罪に問われる覚悟で法廷に立ち、国家に革命を起こすことに成功する。『大逆転裁判1&2』成歩堂龍ノ介の冒険と覚悟の物語であり、ラストでイギリスと日本の司法制度が改革される。つまり『逆転裁判6』と『大逆転裁判1&2』は、いずれも「冒険と覚悟と革命」を描いた物語だったわけだ。こうして「後期逆転裁判」は、「冒険と覚悟と革命」というキーワードに行き着く。
 
逆転裁判シリーズでは、弁護士が危険を冒して被告人を弁護する。そして多くの場合被告人は無実であり、被告人を陥れた罪深い世界を多かれ少なかれ改革するための法廷バトルが繰り広げられることになる。だから逆転裁判シリーズのコンセプトを突き詰めていくと、究極的には「冒険と覚悟と革命」に行き着くのではないだろうか。逆転裁判シリーズを「冒険と覚悟と革命」という主題に導いたという点で、シリーズを『6』と『大逆転裁判1&2』まで続けた甲斐は一応あったと私は考えている。
 

結語

……逆転裁判シリーズは、システムもシナリオも初期三部作である『逆転裁判123』の時点で十分に完成されきっている。そしてシリーズのコンセプトは、『逆転裁判6』と『大逆転裁判1&2』で臨界点に達しているように思える。物語は切りの良いところで完結しているし、作品のコンセプトもゴールに達している。逆転裁判シリーズに、もうこれ以上新たにやれる仕事はあるのだろうか?果たして今後も逆転裁判シリーズの新作が出るというのならば、一体どんな新機軸が打ち出せるのか、気になるところである。