かるあ学習帳

ゲーム/アニメ/特撮/文学/哲学の話をしよう

『ディアルガVSパルキアVSダークライ』批評~怪獣バトルの真骨頂~

『ディアルガVSパルキアVSダークライ』(以下『ダークライ』)は、記念すべき10作目のポケモン映画です。この映画は今までに前例が無い新しい事を開拓しようとする映画…ではなく、過去作『ルギア爆誕』の変奏のような映画だと思いました。 『ディアルガVSパ…

【疫病の文学】大江健三郎『芽むしり仔撃ち』解説

最近、新型コロナウイルスの影響で、カミュの『ペスト』がよく読まれているらしい。『ペスト』はアルジェリアのオランの町にペストが流行し、閉鎖された町の中でもがく人々を描いた小説である。疫病が現実の社会で流行しているため、疫病を描いた文学の需要…

『論理哲学論考』の論考~個はその集団を語り得ない~

元号が令和になってから、私たちの常識では考えられないような理不尽な出来事がずいぶん起こるようになったなあと思う。京都アニメーションのスタジオが放火されたり。超大型の台風が日本に上陸したり。新型コロナウイルスで世界中に死者が出たり。 こうした…

大江健三郎「飼育」のあらすじと解説

皆さんが好きな芥川賞受賞作は何ですか?村田沙耶香の『コンビニ人間』でしょうか。村上龍の『限りなく透明に近いブルー』でしょうか。それとも、安部公房の『壁』?私は、大江健三郎の「飼育」が好きです!今回は、「飼育」のあらすじと解説を書きます。 「…

『七夜の願い星 ジラーチ』批評~小さきものに贈る壮大な物語~

ポケモン映画第6作『七夜の願い星 ジラーチ』(以下『ジラーチ』)は、園田脚本ポケモン映画の最高傑作の一つだと思います。子供たちやかつて子供だった大人たちへのメッセージが溢れる素晴らしい映画だった。 『七夜の願い星 ジラーチ』 監督:湯山邦彦 脚…

『水の都の護神 ラティアスとラティオス』批評~新機軸の導入について~

今回は、ポケモン映画第5作『水の都の護神 ラティアスとラティオス』(以下『水の都』)を批評します。この作品は2017年に行われた人気投票「推しポケモン映画ナンバーワンはキミにきめた!」で1位に輝いた作品です。ファンの皆さんの間で強く支持されている…

『セレビィ 時を超えた遭遇』批評~タイムパラドックスの憂鬱~

今回は、ポケモン映画第4作『セレビィ 時を超えた遭遇』(以下『遭遇』)を批評します。ポケモン映画第1作『ミュウツーの逆襲』から第3作『結晶塔の帝王』までは首藤剛志さんがメインで脚本を担当していましたが、『遭遇』からは園田英樹さんがメインで脚本…

大江健三郎「奇妙な仕事」解説(後編)

「奇妙な仕事」の主人公「僕」たちは、一五〇匹の犬を殺すアルバイトを引き受けます。この物語を読み始めると仕事の内容の奇妙さに面食らいますが、読んでいるうちに、大江さんが表現したいことを伝えるためにはこのシチュエーションこそ相応しい…と思えてく…

大江健三郎「奇妙な仕事」解説(前編)

大江健三郎は、東京大学在学中に処女作「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞しました。文芸評論家・平野謙が「奇妙な仕事」を高く評価し、大江は学生作家として文壇にデビューすることになります。さて、「奇妙な仕事」とは一体どんな小説なのでしょうか。 「…

入不二基義『ウィトゲンシュタイン 「私」は消去できるか』読書記録

今回は、入不二基義先生の『ウィトゲンシュタイン 「私」は消去できるか』の読書記録を書きます。論点が多い本だったので、私にとって特に有用だった前半の箇所を独断で選んで要旨を晒しますw 『ウィトゲンシュタイン 「私」は消去できるか』 入不二基義 NHK…

『劇場版仮面ライダージオウ Over Quartzer』感想~美意識がもたらす暴力について~

今回は、『劇場版仮面ライダージオウ Over Quartzer』(以下『OQ』)を観た感想を書きます。 『劇場版仮面ライダージオウ Over Quartzer』 監督:田﨑竜太 脚本:下山健人 (C)2019劇場版「ジオウ・リュウソウジャー」製作委員会 2019年7月26日公開 おすすめ…

『ミュウツーの逆襲』再考~ニャースの本質について~

ポケモン映画第1作『ミュウツーの逆襲』では、遺伝子操作によって誕生したポケモン・ミュウツーの「逆襲」が描かれます。ミュウツーはこの映画を代表するポケモンですが、この映画はニャースの本質をさりげなく描いた作品でもあると思います。今回はニャース…

強迫性障害を哲学チックに説明します。

いきなり暗い話になりますが、私は今、強迫性障害という心の病気を患っています*1。今回は『論理哲学論考』の続きを読み、ウィトゲンシュタインから知恵を借りて強迫性障害についてできるだけわかりやすく説明しようと思います。『論考』には強迫性障害につ…

『論理哲学論考』の論考~世界はなにでできている?~

さっそく、『論理哲学論考』の冒頭を読んでみましょう。ウィトゲンシュタインは、「世界」とは「事実」の総体だと定義しています。 一、世界は成立していることがらの総体である。 一・一、世界は事実の総体であり、ものの総体ではない。*1 例えば「ウィトゲ…

『論理哲学論考』の論考~なぜ今、『論理哲学論考』なのか?~

明けましておめでとうございます。 新年が始まったことを機に、これからこのブログで『論理哲学論考』の読書記録を綴ろうと思います。テキストは岩波文庫の野矢茂樹訳『論理哲学論考』を、副読本は角川選書の古田徹也著『ウィトゲンシュタイン 論理哲学論考…

『沙耶の唄』病院ENDの考察

今回は、ニトロプラスのノベルゲーム『沙耶の唄』の「病院END」を考察します。『沙耶の唄』には3種類の結末がありますが、私は「病院END」が一番好きですね。補説として、小説版『沙耶の唄』の考察も添えます。 『沙耶の唄』 シナリオ:虚淵玄 原画:中央東…

『沙耶の唄』開花ENDの考察

今回は、ニトロプラスのノベルゲーム『沙耶の唄』の「開花END」を考察します。 『沙耶の唄』 シナリオ:虚淵玄 原画:中央東口 (C)ニトロプラス 2003年12月26日発売 (ここから先には、「開花END」のネタバレが含まれています)

『沙耶の唄』耕司ENDの考察

ニトロプラスのノベルゲーム『沙耶の唄』には、「開花END」「耕司END」「病院END」と呼ばれる3つの結末が用意されています。今回は、「耕司END」を考察します。 『沙耶の唄』 シナリオ:虚淵玄 原画:中央東口 (C)ニトロプラス 2003年12月26日発売 耕司の人…

『沙耶の唄』の考察~全体構造編~

今回から、虚淵玄さんがシナリオを担当した美少女ゲーム『沙耶の唄』を考察します。虚淵さんは、2010年代前半のアニメ史上で非常に素晴らしい仕事をした脚本家ですよね。『魔法少女まどか☆マギカ』『PSYCHO-PASS』など、アニメ界を席巻する名作を続々生み出…

大江健三郎『燃えあがる緑の木』解説~喜びを抱け、人間は破壊されない~

さらに私の耳にはいまも私たちみなが未来に向けて唱和した言葉が鳴っているのだ。 ーRejoice!(第三部p.412) 『燃えあがる緑の木』の作中では、“Rejoice!”という言葉が愛唱されます。新潮文庫版『燃えあがる緑の木』の表紙にも、“Rejoice!”とデカい字で書いて…

大江健三郎『燃えあがる緑の木』第三部のあらすじと解説

今回は、大江健三郎の代表作『燃えあがる緑の木』第三部のあらすじと解説を掲載します。壮大な『燃えあがる緑の木』の物語は、この第三部で完結します。第三部は物語の起伏が激しく、なおかつメッセージ性にも富んでおり、ラストに相応しい内容でした。 『燃…

『仮面ライダーゼロワン』批評~人間の責任を考える~

9月から、令和初の仮面ライダー『仮面ライダーゼロワン』の放送が始まりました。『ゼロワン』では、祖父の遺言を受け22歳の若さで社長になった主人公・飛電或人たちと、テロ組織「滅亡迅雷.net」の戦いが(主に)描かれます。或人は仮面ライダーゼロワンに変…

『裂空の訪問者 デオキシス』批評~奥行きのある世界~

今回は、ポケモン映画第7作『裂空の訪問者 デオキシス』(以下『裂空の訪問者』)を批評します。いきなり嫌な話になるのですが…この映画はネットでの評判があまり良くないです。某匿名掲示板のつまらなかったポケモン映画を挙げるスレとかで、この映画が酷評…

イェーツ「Vacillation」I節を読む~『燃えあがる緑の木』第二部を手がかりにして~

「Vacillation」(『対訳 イェイツ詩集』所収) イェーツ(高松雄一編) 岩波文庫 2009年初版発行 今回は、アイルランドの詩人・イェーツの詩「Vacillation(ヴァシレーション)」を解読します。「vacillation」という単語は、日本語では「動揺」「揺れ動く…

大江健三郎『燃えあがる緑の木』第二部のあらすじと解説

今回は大江健三郎の後期の大作『燃えあがる緑の木』第二部のあらすじと解説を掲載します。この小説は第二部から一気に論点が増えます。今回でその全てを語り尽くすことは不可能ですが、とりあえず語れるところまで語ってみましょう。 『燃えあがる緑の木 第…

大江健三郎『燃えあがる緑の木』第一部のあらすじと解説

今回は、日本人で2人目のノーベル文学賞作家・大江健三郎の代表作『燃えあがる緑の木』第一部のあらすじと解説を掲載します。先月、Eテレの「100分de名著」という番組で『燃えあがる緑の木』が取り上げられたので、この機会に番組の内容も考慮しつつ考察して…

『神速のゲノセクト ミュウツー覚醒』批評~もっと「過去」をください~

今回は、ポケモン映画第16作『神速のゲノセクト ミュウツー覚醒』(以下『覚醒』)を批評します。 『神速のゲノセクト ミュウツー覚醒』 監督:湯山邦彦 脚本:園田英樹 (C)ピカチュウプロジェクト 2013年7月13日公開 おすすめ度:★★☆☆☆(題材は面白いのに、…

『劇場版仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング』批評~水と油の向こう側~

今回は、『劇場版仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング』(以下『トゥルー・エンディング』)を批評します。この映画は文字通り、TV版『仮面ライダーエグゼイド』最終話の後日談としての「真の結末」を描いた作品です。 『劇場版仮面ライダーエグ…

『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』考察feat.マルクス・ガブリエル、三島由紀夫

今回は、昨年末に上映された映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』(以下『平ジェネFOREVER』)を考察します。それと関連付けて、マルクス・ガブリエルの哲学や三島由紀夫の文学なども再考してみようと思います。 『仮面ライダー平成ジェネレー…

マルクス・ガブリエル『なぜ世界は存在しないのか』の要約

最近、ボン大学のマルクス・ガブリエル教授の哲学を勉強しています。今回は、ガブリエルの主著『なぜ世界は存在しないのか』の要約を掲載します。ついでに、『なぜ世界は存在しないのか』を読み解くのに役立ちそうな情報も書き添えておきます。 『なぜ世界は…