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劇場版仮面ライダービルド暗黒啓蒙~民主主義と平等主義による「天才いじめ」を告発せよ!~

「民主主義」「平等主義」という言葉には、多くの人々の間で未だにかなり良いイメージが持たれている……気がする。
 
しかし、果たして民主主義と平等主義は、人々を本当に幸せにする考え方なのだろうか?本稿では劇場版仮面ライダービルドBe The One』(以下、劇場版ビルド)ニック・ランドの『暗黒の啓蒙書』を教材にして、民主主義と平等主義の恐ろしさを考察していきたい。劇場版ビルドは、民主主義と平等主義による「天才いじめ」を描いた、クッソ面白恐ろしい特撮映画だから。
 

民主主義で、地球をぶっ壊す。

劇場版ビルドの序盤では、東都・西都・北都とかいう架空の都市の都知事が就任演説をする。特に都知事の伊能はカリスマ的な人望の持ち主なのだが、この国に仮面ライダーは必要無い」という過激思想の持ち主であった。『仮面ライダービルド』の作中では仮面ライダーが軍事兵器として運用されているので、仮面ライダーを殲滅して日本を平和にしようぜ!と伊能は力説する。
 

伊能「仮面ライダーは戦争の兵器です。皆さんは戦争によって、多くのものを失いました。仮面ライダーこそが、我々を苦しめた元凶なのです!特に仮面ライダービルドは、かつて国家反逆罪が適用されながら、いまだに我が国を跋扈している凶悪な存在です。そんなビルドを、野放しにしていいんですか!」
 

この伊能って人、えらく仮面ライダーを敵視してるな……過去にライダーに嫌な目に遭わされたのかな?とか思われそうですが、実態はもっとえげつなかった。都知事の伊能、西都知事郷原、北都知事の才賀の正体は全員、悪の地球外生命体「ブラッド族」だったのである!ブラッド族は三人の知事に擬態して日本の政治を操り、地球をぶっ壊そうと企んでいたのである。
 

ブラッド族は地球を滅ぼそうと企んでいるので、その際には正義の味方仮面ライダーが邪魔である。なのでブラッド族は政治家に擬態して民衆の支持率を増やし、マスメディアや異能力も利用して大衆を洗脳した。つまりブラッド族は民主主義社会のシステムをずる賢く悪用し、仮面ライダーに対する民衆のヘイト感情を増やそうとしたわけだ。
 
民主主義社会では、民衆の支持によってお偉いさんが選出される。と言うことは嫌な言い方をすると、民衆の支持を集めるのが上手ければブラッド族のように腹黒い人物でもクッソ偉くなれるのである。コミュニケーション能力が高い詐欺師やナンパ師は民衆の支持を集めて政治家になりやすいし、テレビやようつべで人気者になった有名人には票が集まりやすい。人々に賄賂を配って選挙に当選するのも有効な戦略だろう。ニック・ランドは2012年の時点で、この辺のからくりを批判していた。
 

ニック・ランド(1962~)

選挙で勝利を収めることは圧倒的なまでに票の買収に左右される問であり、(教育やメディアといった)社会にたいする情報提供機関はもはや、有権者にその力がないのと同様、政治家たちの贈収賄を抑止する力をもっていない。したがって倹約につとめるような政治家は、たんに競争力のない政治家を意味することになり、そしてそうした不適合者は、ダーウィニズムの民主主義版によって遺伝子プールから排除されることになる。」*1
 

天才ゆえ孤独ですね、カッケーっ!

仮面ライダービルドに変身する主人公・桐生戦兎は、最高のIQを持つ天才物理学者である。戦兎は洗脳された大衆とブラッド族に単騎で戦いを挑み、仮面ライダービルドジーニアスフォームに変身した。ジーニアスフォームは天才物理学者と天才科学者の英知によって開発された姿で、地球外生命体と互角に()戦うための機能が搭載されている。こう書くとジーニアスフォームはクッソ強いんだろうなと思われそうですが事態は逆で、ロクな見せ場に恵まれていないのである!
 
ジーニアスフォームは天才の本領が発揮された最強の姿なはずなのだが、ブラッド族のエボルトが変身した仮面ライダーエボルが強すぎるので、TV本編では劣勢に立たされることが多かった。これで劇場版で見せ場があったら多少は成仏できるけれど、ジーニアスフォームは劇場版でも大衆を率いるブラッド族に無惨な形で敗北した。
 

ブラッド(伊能)「ハッハッハッハ…つらい、つらいなあ。こんなに体を張っても民衆から非難され、罵声を浴びるんだからなあ!
民衆「殲滅、殲滅、殲滅!殲滅、殲滅、殲滅!
 
戦兎はIQが異様に高い切れ者だし仮面ライダーに変身できるので、ブラッド族の伊能にとっては極めて「厄介な人間」である。そして大衆は政策の善悪を見極めるリテラシー能力に恵まれていないので、ブラッド族の詐術に引っかかって戦兎を悪者だとみなした。戦兎はTV本編でも、苦悩と不幸に満ちた人生を送る天才として描かれている。ちなみに現実世界でも、大多数の凡人よりも不幸な天才はクッソ多いというのは有名な話である。
 
例えばみぞのりほさんは戦兎のように知能が発達しており(IQ180)、高度な身体能力にも恵まれた女性である。みぞのさんは他の凡人よりも優秀なので、中学時代から他人からやたらと仕事を押しつけられ、疲れて不登校になった。その後もみぞのさんは躁鬱・退学・パワハラいじめで精神崩壊などの末、最終学歴は7浪で明治大学卒業」である。ようつべには他にもIQが高すぎて社会性を身に付けられない不幸な天才青少年の動画がいっぱい見付かるから、気になる人は調べてくれよな☆
 

ニック・ランドは、民主主義のみならず平等主義も否定している。「人類みな平等」というのは絵に描いた餅のような机上の空論であり、全ての人間は生まれながらに様々に異なっている。人間のIQも人それぞれにバラバラであり、IQが高すぎる天才は「変人」として嫌がられやすく、逆にIQが低すぎるDQNは「馬鹿」だと罵られやすい。天才物理学者の戦兎と「猿より頭が悪い」と噂される荒くれ者の万丈は大衆の中で孤立した末、劇場版の終盤で「天才とおバカの合体変身」に成功した。厄介な天才と厄介なおバカはいずれも社会の煙たがられ役だという点では、同じ穴の狢である。
 
したがって劇場版ビルドの『Be The One』とかいう題名には、「天才とおバカは一つだ(紙一重だ)という皮肉めいた意味合いが込められていると私は解釈している。
 

「『社交的な人間たち』はつねに厄介な連中に難癖をつけ、たいていはそうした者たちと結婚したり一緒に仕事をしたりすることを拒み、集団での活動や重要なポストから彼らを締めだして、中傷的な名前をつけ、彼らをのけ者にして近寄ることがない。*2
 

ジーニアスいじめは止まらない

劇場版ビルドは、民主主義と平等主義による「天才いじめ」を告発した傑作である。悪い詐欺師ペテン師ナンパ師たちは、大衆を上手いことコントロールして、自分に都合の悪い切れ者民主的な」多数決で潰そうとする。そしてIQが少数の厄介者たちは「平等な」人間像から逸脱しているので、凡人たちによって排斥されるのだ。
 
さあ、仮面ライダーが大好きな子供達大人のお友達のみんな、わかってくれたかな???
民主主義と平等主義が悪魔合体すると、多数派が少数のIQの持ち主を差別し潰すのにとっても便利な、危険社会が生まれるんだよ☆☆☆(o^O^o)☆☆☆
 
劇場版「ビルド・ルパパト」製作委員会(C)石森プロ・テレビ朝日ADK東映(C)2018テレビ朝日東映AG・東映

*1:ニック・ランド(五井健太郎訳)『暗黒の啓蒙書』講談社、二〇二〇、二五頁。

*2:同上、一六八頁。