かるあ学習帳

この学習帳は永遠に未完成です

『ルリドラゴン』のココがスゲェ。

最近、ヲタクの間で『ルリドラゴン』とかいう漫画が話題になっているっぽい。
私の感触では、この漫画の内容よりも、この漫画がいきなり無期限休載になったことが大きな話題を呼んでいると思う。『ルリドラゴン』は今年の6月に週刊少年ジャンプで連載が開始され、ユルい作風と好感の持てる作画でヲタクの注目を浴びた。しかし作者の眞藤さんが8月に早くも体調を崩したので、今日に至るまで連載がストップしている。『ルリドラゴン』は第1巻しか発売されていないまま休眠中だが、この1巻の売れ行きは非常に好調だと評判である。ルリドラゴン』の今後……わたし、気になりますっ!。
 
『ルリドラゴン』第1巻の裏表紙には、「ドラゴンガール・ルリの日常がゆるっと始まる。」と書いてあった。で、私が読了した所、確かにこの漫画の雰囲気はユルいなと思った。しかしこの漫画は、他の作品以上に攻めたストーリー展開をユルい衣で包んでいるとも俺は思うね。今日は『ルリドラゴン』のスゴい所をネタバレ全開で書いちゃうもんねっ!
 

『ルリドラゴン』

眞藤雅興
2022年10月9日
(C)Masaoki Shindo 2022
 
(以下、ネタバレ全開です)

 

 
 

「ツノ関係ないじゃん」という結論がスゲェ。

主人公・ルリは朝に鏡を見て、自分の頭からツノが生えていることに気付いた。ルリは頭からツノが生えたことを母親に報告すると、ルリの正体は人と龍のハーフだった」という事実を母親が告げる。ルリの父親は龍なので、ルリの頭からも龍のようなツノが生えてきたのである。おいおい、マジかよ??一体どうすんだよ、これから???
 

しかし母親はなに食わぬ表情で、ルリに普段通りに学校に行くことを勧める。そしてルリ本人もまあまあ動揺したけど、制服に着替えてフツーに登校した。学校の生徒や先生はルリの頭にツノが生えていることを珍奇な目で見たものの、ルリと相変わらず仲良くする。ルリの頭からツノが生えても日常は大して変わらず、第1話ではツノ関係ないじゃん」という結論になった。
 

(C)石森プロ・テレビ朝日ADK EM・東映

私がこの漫画の第1話を読み終わって真っ先に思い出したのは、仮面ライダーキバである。『キバ』の主人公・紅渡は、人間と吸血鬼のハーフである。渡は人間と人外のハーフという点では、ルリと同類である。しかし渡が人外の血を継承していることを告白した結果、吸血鬼を敵視する人間たちとの不和が発生してしまう。そして『キバ』では、「人間と人外の共存」というテーマが長大で複雑な物語を通じて模索されるのだ。
 
「人間と人外の共存」だけでなく、「貴族と奴隷の恋愛」や「異民族同士の戦争」など、出身が異なる者同士の関係を描いた名作大作はクッソ多い。しかし、出身が異なる者同士が苦労して交流したり戦闘したりする場面が濃密に描かれれば描かれるほど、「出身が異なる者同士の間には物凄く溝がある」という事実が意識されてしまう恐れがある。
 
しかし『ルリドラゴン』では、「人間と龍の差異」が大した溝を作らず、日常がユルく続いていく。そして第1話では「ツノ関係ないじゃん」の一言で、人間と人外の差異は「どうでもいいこと」として却下された。「出身が異なる者同士の差異を問題にする」のではなく、出身が異なる者同士の差異を問題にしない」ことによって、現実ではおそらく実現不可能なくらい民度が高い仲良し日常生活保たれた。この漫画と同程度の民度を現実で再現するのはおそらく絶望的に困難だろうと私は思ったし、作中の日常はそこら辺の異世界もの以上に非現実的なファンタジーの域に達しているとも思った。
 

生物兵器」がテキトーに扱われている所がスゲェ。

ルリは頭にツノが生えただけでなく、口から火を吐けるようになる。火炎放射の反動でルリは口から血を吐き、火傷を負う。そしてルリは自己治療のためもあって、しばらく引きこもりになる。ルリが引きこもっている内に、学校では「ルリは生物兵器なんじゃないか」という噂が流れる。しかしルリが久し振りに登校すると、生徒も先生もルリを温かく迎え入れ、世の中色んな人がいるから仲良くやっていこう」という結論になる。
 
ルリは頭にツノが生えた後、火を吐けるようになり、第1巻のラストでは放電できるようにもなる。これらの能力は日常系漫画のヒロインよりも、異能力バトル漫画のヒロインに適した能力であろう。ツノは相手を突き刺すための凶器になりそうだし、火炎放射と電撃は敵を攻撃するのにとても役立ちそうな技である。しかも『ルリドラゴン』は週刊少年ジャンプの漫画だから、編集部から「この設定で異能バトルやっちゃおうZE☆」って話が持ち出されてもおかしくない。しかしそれでもこの漫画では戦闘が全く発生せず、相変わらずユルい日常が続くのである。
 

(C)池澤真・津留崎優・Cygames/ファ美肉製作委員会

ルリは火炎放射と電撃が使える人外なので、作中でも噂された通り「生物兵器」として有用である。ヲタクコンテンツでは、「兵器をどのように平和利用するか」というテーマも古来から扱われてきた。仮面ライダービルド』では、国家の防衛のための軍事兵器である仮面ライダーが、戦争の道具に悪用された。異世界美少女受肉おじさんと』にも本来は国家を守るための兵器だった「メーポン」が登場したが、これもまた国家を破壊するために悪用された。こうした作品は、防衛のための兵器が攻撃のために使われる危険性」を示唆している。
 

『ルリドラゴン』のルリには生物兵器としての利用価値があるので、その気になれば攻撃にも防衛にも動員できるだろう。しかしこの漫画の作中ではユルい日常がノホホンと続き、戦闘や戦争が発生する気配が今の所全く感じられない。つまり利用可能な兵器が身近にあったとしても、世界が優しい世界で、世界の民度が高ければ、「兵器をどう使うか」は問題にならないのである。
 

「引きこもりから復帰したばかりの子供とゲームする親」がスゲェ。

久し振りに登校して帰宅したルリは、母親とヌルい会話を交わしながらたこ焼きを食べる。そして母親は「久々にゲームしよ」と言い、ルリも親に連られてテレビゲームをプレイし始める。作中でプレイされた「ウィーマリ」というのはおそらく、NewスーパーマリオブラザーズWiiのことであろう。そしてこの母娘は一緒に、ウィーマリを楽しくプレイし続けるのである。
 

はああーーー!??一体どぉなっちゃってんだよ、この母娘www
 
最近、日本の家庭では「子供のゲーム依存」が大問題になっている。国内の中高生の7人に1人ぐらいはゲーム中毒で、魂が異世界に転生した人みたいになっているらしい。ゲーム中毒の中高生はゲームに熱中するあまり学校に通えなくなり、課金もしまくったりして親を困らせているらしい。そのため、令和の親たちはどうすれば子供のゲーム依存をやめさせられるか」に悩まされている。一方「eスポーツ」という言葉が着実に定着しているので、別に子供がゲームに熱中してもええやん」と寛容な態度を取る親も存在する。
 
ところが『ルリドラゴン』では、なんと子供ではなく親のほうが「ゲームをやりたい」と言い出し、その話に乗った子供と一緒にゲームに熱中するのである!しかも子供は久し振りに学校に通い始めたばかりなのにである。この母親は、ルリの心を解きほぐすための気配りでゲームをやり出したんじゃないの?」という仮説が立てられるけれど、この親はそこまで考えず適当にウィーマリを起動しているようにも思える。ここまで行くとルリの母親は「理解のある親」「器の大きい親」ってレベルじゃねえぞ。この母娘が恐れや不安で躊躇うことなくゲームを楽しむ光景はかなりシュールで、私にはもはやユルさを通り越した狂気を感じるレベルであった。
 
 
 
……さて皆さん、いかがでしょうか。この漫画の雰囲気はユルい日常系に見えますが、この漫画がやっていること自体は実は全然ユルくないです。第1巻の時点で既存の常識を破壊しまくってるので、この漫画は打ち切りにならずに進撃して欲しいですw。