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減速主義コメディーとしての『妖怪ウォッチ』第9話「ロボニャン始動!」

いきなりステマみたいな話で恐縮ですが、今Youtubeコロコロチャンネル」でTVアニメ版妖怪ウォッチが全話無料で配信されている。『妖怪ウォッチ』は、一昔前にあのポケモンをぶっこ抜く勢いの社会現象を起こしたことで知られるコンテンツである。
 
私は『妖怪ウォッチ』門外漢のアラサー人間なのですが、端的に言って『妖怪ウォッチ』、試しに観てみたらクッソ面白いですわ。子供だけでなく大人も楽しめるキレッキレのギャグの連鎖が止まらないぜ。楽しいことを探してるけど物価が高くて楽しみを我慢している」とお嘆きのそこのYOU!チミもようつべで『妖怪ウォッチをタダで観て、ゲラゲラポーと笑い狂おうぜっ☆☆☆(^o^)☆☆☆
 

高性能のロボニャン、安上がりのジバニャン

今回は『妖怪ウォッチ』第9話後半「ロボニャン始動!」を考察する。「ロボニャン始動!」は「減速主義コメディー」だと私は思っていて、この話には妖怪ウォッチという作品のコンセプトがよく反映されていると感じられた。
 

「ロボニャン始動!」の出だしでは、ケータウィスパージバニャンの三組がテレビを観ながらグダグダと与太話を繰り広げる。端的に言ってケータ・ウィスパー・ジバニャンの三組はかなり間抜けな集団であり、彼らの脱力系スタイルが視聴者の腹筋を崩壊させているのである。この三組はケータ君の自宅の近くで、Aランク妖怪「ロボニャン」に遭遇する。
 

ロボニャンはなんと未来から来たロボットであり、その正体は現在のジバニャンが改造された姿であると暴露する。ジバニャンは妖怪として数世紀後まで生きて、進化したテクノロジーによってロボットに改造される。ロボニャンは現在の腑抜けたジバニャンとは似ても似つかないほど横柄な語り口で喋り、ロボットとしての便利機能も多数搭載されている。
 

ジバニャン「体固いし、静かに歩けないし、猫のいいとこ台無しニャ!」
ロボニャン「ならば、お前と私の技能の比較をしよう。」
ジバニャン「技能の比較ニャ?」
ロボニャン「ああ。技能を比べれば、私の価値は一目瞭然だ。」
 

ジバニャンは、自分の未来の姿であるロボニャンのことが気に入らない。そこでロボニャンはジバニャンに「技能の比較」を提言する。ロボニャンはF1に変形して超スピードで疾走したり、大型トラックを指一本で止めたり、ロケットパンチを発射したりして、現在のジバニャンとは比べものにならないほどの実力を見せ付けたさらにロボニャンは充電で動くため、食べ物を食べる必要も無いという。
 

しかしロボニャンを充電するためには膨大なエネルギーが必要なため、ロボニャンを泊めたケータ君の家の電気代が一晩で恐ろしく上昇した。その結果ケータ君は母親に厳しく非難され、ジバニャンのほうがロボニャンよりも安上がりだから良い」という結論になった。
 

減速主義のコメディー

この「ロボニャン始動!」には、テクノロジーへの批判が込められていることは明らかである。テクノロジーが発達すると、高性能なマシンが数多く発明される。しかし高性能なマシンは大なり小なりエネルギーを消費しがちなので、家庭の電気代や地球の環境を圧迫しかねない。だからロボニャンのようなマシンはある意味ではぼったくりのようなものであり、それなら野生の猫に近いジバニャンのほうが案外マシだよねというのがこの回の趣旨であろう。
 
私は妖怪ウォッチビギナーですが、テクノロジーへの批判はTVアニメ版『妖怪ウォッチという作品自体の核心であるように思える。なぜならTVアニメ版『妖怪ウォッチ』OPゲラゲラポーのうた」の歌詞も、テクノロジーを批判する内容になっているからだ。OPの冒頭でテクノロジーを批判している以上、妖怪ウォッチというアニメ自体が反テクノロジー体制を志向している可能性が高いだろう。
 
瞬間伝わるメッセージ
ビュンビュン 計画サクサク
ズンズン
でも充電切れたら大変だ
繋がんなきゃみんなプンプン
ねえベンリって何だろう?
未来に抱いた不安感も
全部ゲラッポー 時計パッと
マ・キ・モ・ド・セ
 
現代社会ではスマホやパソコンなどの開発が高スピードで進んでおり、メッセージがSNSやメールでビュンビュン送受信される。そしてアメリカのトップビジネスエリートや加速主義者などはスピード狂になりがちで、金儲けやアプリ開発仮想通貨やメタバースなどの領域をすごい勢いで開拓しまくっている。つまり「テクノロジーを乱用してベンリに暮らしていこう」というのが、現代っ子の考え方なわけだ。
 
しかしテクノロジーを使用するのは、大なり小なり環境に悪影響を与えるだろう。特に充電が切れたら多くのテクノロジーは使用不可能になり、ロボニャンのように高性能なマシンも置物にしかならないだろう。そこで提案されるのが、「時計を巻き戻す」ということだ。テクノロジーを加速させるのではなく、時計の針を巻き戻し、減速させればよいのだという説が浮上する。
 
ロボニャンは現在のジバニャンの未来の姿で、高性能の代償として多額の電気代を発生させた。しかし現在のジバニャンはかなり無能な妖怪であるものの、安いチョコボーを食わせるだけで喜ぶ。ジバニャンは言わば「ロボニャンの減速した姿」なのであり、この「ロボニャン始動!」とかいうアニメ自体も「テクノロジーの減速」を提案するアニメだと言ってよかろう。
 
現在を生きる私たちの世界は、未来から見れば「未来から巻き戻された世界」である。現時点でテクノロジーを加速させる加速主義者たちよ、そのまま加速してよいのだろうか?時計の針を巻き戻すかのようにして、テクノロジーを減速させたほうが、案外安上がりで済むとは考えられないのだろうか?一昔前に流行った妖怪たちが、そう囁いているように私には思えた。
 (C)LEVEL-5/妖怪ウォッチ♪プロジェクト/テレビ東京
 
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「ロボニャン始動!」が減速主義妖怪アニメである一方、「史上最悪のトゲピー!」は加速主義ポケモンアニメである。意識高い系の読者諸賢には、双方とも視聴した上で減速主義と加速主義の是非をジャッジして頂きたい。