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『逆転裁判6』レビュー~論理をあきらめるな~

逆転裁判6』をプレイし終わった。逆転裁判6』の最終話(第5話)は最高だった。久し振りに物語を読んで心底面白いと思った。こんなに面白いシナリオ、凡人には書けねえよと思った。「『逆転裁判6』は凡作」という意見をネットで見ましたが、そんなわけないと思った(笑)。逆転裁判6』に感銘を受けたので、今回は『逆転裁判6』について語ります。

 

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2016年6月9日発売
おすすめ度:★★★★☆(オカルト要素は人を選びますが、最終話が神)
 

人を選ぶ世界観とオカルト要素

 

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逆転裁判6』では、成歩堂弁護士が「クライン王国」という架空の国を訪れます。クライン王国には「弁護罪」という法律があり、この法律のせいで弁護士不在の裁判が行われていました。しかし成歩堂弁護士は異国で命がけの弁護を行う事を決意し、悪法に支配された国家を次第に変えていく……というストーリーです。
 
最初に言っておきますが、『逆転裁判6』のシナリオは、かなり「人を選ぶ」と思います。まず、法廷に弁護士が存在しない架空の国という物語の舞台がぶっ飛んでいて、度肝を抜かれる人が多いだろうと思います。前作『逆転裁判5は科学が発達した近未来的な世界観が持ち味でしたが、今作ではえらい変わりようでした。科学じゃなくて宗教が発達した国家が舞台になってる。
 

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逆転裁判6』はオカルト要素が滅茶苦茶に多くて、現実主義な読者はついていけないのではなかろうかと思う。殺された被害者の記憶を再生する儀式を法廷で行ったり、霊媒を巧妙に利用した犯行が行われたりして、現実では起こり得ない超常現象に満ちた作品でした。ミステリにリアリティを求める読者がプレイしたら、「ふざけるな!」と最悪怒り出すかもしれません。リアリストにこの作品は勧められないなー。
 

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逆転裁判6』では霊媒ビジョン」と言いまして、事件の被害者が死ぬ直前に五感で感じた情報を水面に映す儀式が行われます。水面に映し出された光景を資料にして事件を推理していくのですがこれがクッソ難しいんだわwww水面に映っている光景がぼやけていて見づらいし、五感で感じた錯綜する情報と巫女の託宣の矛盾を考えるのもしんどい。なにぶん情報量が多くてね。私には「霊媒ビジョン」は難しすぎて、好きになれなかったな。何度もゲームオーバーになった。
 

非現実的な設定から得られるもの

 
さて、『逆転裁判6の良くなかった点をだいぶ書いてしまいましたが、これからこのゲームを褒めようと思います(笑)。『逆転裁判6のぶっ飛んだ世界観や溢れ出るオカルト要素は、個人的に趣味じゃない。主観的な感情論で言うと『逆転裁判6は生理的にかなり抵抗がある作品だったけど、この非現実的な世界観や設定だからこそ得られるものは多かったと思う。
 

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逆転裁判6』のクライン王国の法廷は、「あきらめの法廷」と呼ばれています。法廷に弁護士が存在しない以上、被告人は減刑や無罪判決をあきらめなければなりません。そして、ライバルのナユタ検事は、弁護人に「あきらめなさい」としつこく勧告してきます。クライン王国では「あきらめ」が支配的なのですが、このあきらめムードは、腐敗した仏教や禁欲主義思想の悪い所をよく描いているなと思った。
 

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注:クライン王国ではなく日本が舞台のお話もあります

仏教思想やショーペンハウアーの哲学とかでは「あきらめ」が肝心だけど、クライン人は物事を悪い意味であきらめている。成歩堂弁護士たちはクライン人のあきらめに抵抗し、無罪判決を勝ち取ることを最後まであきらめません。世界があきらめムードに支配されているからこそ、あきらめない信念が一層強く光り輝く。あきらめに満ちた世界観が、「判決を最後まであきらめない」という逆転裁判シリーズのテーマを際立たせる良いスパイスになっていると思いました。

 
また、世界観や設定が非現実的でも、論理的思考や真実の提示による説得が普通に通用する所も良かった成歩堂弁護士たちは逆転裁判らしい柔軟な推理や証拠品による説得をクライン王国でも行うのですが、こうしたロジカルな説得はクライン王国の人々の心を変えていく。推論や根拠のような論理の力や、事件のたった一つの真実(『論理哲学論考』でいう「事実」)は、イカれた国の慣習をも変革する。逆転裁判6』では「理にかなっていることの強さ」が、設定が非現実的なぶんだけ鮮やかに表現されていると思いました。
 

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感情論で言うと「霊媒ビジョン」を私は好きになれなかったのですが、霊媒ビジョン」の必要性や意義はちゃんと認めていますよ。霊媒ビジョン」は、あやふやな証拠を叩き台にしてみんなで議論することの大切さを実感させるシステムだったと思います。また、逆転裁判シリーズに対して「霊媒を利用して犯人を特定すればいいじゃん」というツッコミが昔から来ていましたが、そのツッコミへの応答として、「霊媒ビジョン」は、やるだけの価値はあったんじゃないかなと思います。
 
逆転裁判6』を好意的に解釈すると、弁護士が不必要とみなされる国家を描いたディストピア物語」として良くできていたんじゃないかと。
 

異色作にして集大成

 

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逆転裁判6』の最終話は、本当に凄かった。オドロキ君の過去が掘り下げられ、ナユタ検事の魂が救済され、クライン王国に大革命が起こる盛りだくさんの伏線回収劇。多くのメインキャラクターに活躍の場が与えられ、良い意味で読み手の期待を裏切りまくる展開の連続に感動が止まらなかった。相変わらずオカルト色の強い話だったけど、異能バトルと法廷バトルが融合したような熱い裁判だったぞw
 
多くのユーザーが指摘していることですが、逆転裁判6の最終話は「オドロキ君の物語」です。オドロキ君は成歩堂の部下であり、成歩堂と比べて「主人公力」がいまいち劣るので、一部のファンからは「劣化成歩堂と揶揄されているキャラだった。そのオドロキ君が、最終話でとんでもない大活躍をします。
 

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最終話の前半でオドロキ君は成歩堂に「勝利」し、成歩堂を「救済」するのですが、この場面を読んだ私は「あー、山﨑Dも巧舟に『勝利』し、巧舟を『救済』したな」と思いました。山﨑剛さんが統括した『逆転裁判6の最終話は、巧舟さんが執筆した『逆転裁判1~3』の最終話に匹敵するくらい面白かった。話のスケールも壮大で、ある点では巧舟さんを超えていると思った。オドロキ君がこれだけ成長したんだから、悪評さくさくたる『逆転裁判4』も救われたんじゃないかな。という訳で、成長した成歩堂の部下・オドロキ君」と「健闘した巧舟の後続・山﨑D」がダブって見えました。
 
逆転裁判6』は異国が舞台の異色作ですが、これまでの逆転裁判シリーズの集大成のような出来でした。異色作にして集大成」という点で、『逆転裁判6』は『ポケットモンスターウルトラサン/ウルトラムーン』のようなポジションのソフトだなと思いました。ポケモンUSUMはアローラ地方という南国風の地が舞台で、ウルトラビーストみたいに変なポケモンも出てくるけど、従来のポケモンシリーズの集大成のような出来だった。『逆転裁判6』もそれに近い感じで、「異色作にして集大成」だと思った。オカルト裁判に抵抗が無い人は、ぜひプレイしてみて下さい。龍は屈せず!