2020-01-01から1年間の記事一覧
『ゼロ年代の想像力』 宇野常寛 ハヤカワ文庫 2011年初版発行 ・単なる「趣味語り」に留まらない現代社会論 今回は『ゼロ年代の想像力』とかいう本の書評をします。『ゼロ年代の想像力』は、批評家・宇野常寛のデビュー作です。『ゼロ年代の想像力』という物…
私たちの身の周りにはフィクションが溢れている。本稿では、フィクションとは大雑把に虚構や創作物を指す。本屋に足を運べば、小説や漫画が多数販売されている。毎日夥しい数のドラマやアニメがテレビで放送され、インターネットで配信されている。フィクシ…
大昔の美少女ゲーム『フロレアール~すきすきだいすき~』(以下『フロレアール』)の主人公・ジャンは、言語ゲームについて語っています。ジャンによれば、貨幣経済や民主主義や自然科学やカトリシズムのような価値観は全て「言語ゲーム」だという。 ……貨幣…
今回から、知る人ぞ知る美少女ゲーム『フロレアール~すきすきだいすき~』(以下『フロレアール』)を考察します。『フロレアール』は1999年に発売された古代の美少女ゲームで、パッケージ版を現在入手するのは困難です。しかし、この作品はDMM GAMESを利用…
最近、新型コロナウイルスの影響で、カミュの『ペスト』がよく読まれているらしい。『ペスト』はアルジェリアのオランの町にペストが流行し、閉鎖された町の中でもがく人々を描いた小説である。疫病が現実の社会で流行しているため、疫病を描いた文学の需要…
元号が令和になってから、私たちの常識では考えられないような理不尽な出来事がずいぶん起こるようになったなあと思う。京都アニメーションのスタジオが放火されたり。超大型の台風が日本に上陸したり。新型コロナウイルスで世界中に死者が出たり。 こうした…
ポケモン映画第6作『七夜の願い星 ジラーチ』(以下『ジラーチ』)は、園田脚本ポケモン映画の最高傑作の一つだと思います。子供たちやかつて子供だった大人たちへのメッセージが溢れる素晴らしい映画だった。 『七夜の願い星 ジラーチ』 監督:湯山邦彦 脚…
今回は、ポケモン映画第5作『水の都の護神 ラティアスとラティオス』(以下『水の都』)を批評します。この作品は2017年に行われた人気投票「推しポケモン映画ナンバーワンはキミにきめた!」で1位に輝いた作品です。ファンの皆さんの間で強く支持されている…
今回は、ポケモン映画第4作『セレビィ 時を超えた遭遇』(以下『遭遇』)を批評します。ポケモン映画第1作『ミュウツーの逆襲』から第3作『結晶塔の帝王』までは首藤剛志さんがメインで脚本を担当していましたが、『遭遇』からは園田英樹さんがメインで脚本…
「奇妙な仕事」の主人公「僕」たちは、一五〇匹の犬を殺すアルバイトを引き受けます。この物語を読み始めると仕事の内容の奇妙さに面食らいますが、読んでいるうちに、大江さんが表現したいことを伝えるためにはこのシチュエーションこそ相応しい…と思えてく…
大江健三郎は、東京大学在学中に処女作「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞しました。文芸評論家・平野謙が「奇妙な仕事」を高く評価し、大江は学生作家として文壇にデビューすることになります。さて、「奇妙な仕事」とは一体どんな小説なのでしょうか。 「…
今回は、入不二基義先生の『ウィトゲンシュタイン 「私」は消去できるか』の読書記録を書きます。論点が多い本だったので、私にとって特に有用だった前半の箇所を独断で選んで要旨を晒しますw 『ウィトゲンシュタイン 「私」は消去できるか』 入不二基義 NHK…
今回は、『劇場版仮面ライダージオウ Over Quartzer』(以下『OQ』)を観た感想を書きます。 『劇場版仮面ライダージオウ Over Quartzer』 監督:田﨑竜太 脚本:下山健人 (C)2019劇場版「ジオウ・リュウソウジャー」製作委員会 2019年7月26日公開 おすすめ…
ポケモン映画第1作『ミュウツーの逆襲』では、遺伝子操作によって誕生したポケモン・ミュウツーの「逆襲」が描かれます。ミュウツーはこの映画を代表するポケモンですが、この映画はニャースの本質をさりげなく描いた作品でもあると思います。今回はニャース…
さっそく、『論理哲学論考』の冒頭を読んでみましょう。ウィトゲンシュタインは、「世界」とは「事実」の総体だと定義しています。 一、世界は成立していることがらの総体である。 一・一、世界は事実の総体であり、ものの総体ではない。*1 例えば「ウィトゲ…
明けましておめでとうございます。 新年が始まったことを機に、これからこのブログで『論理哲学論考』の読書記録を綴ろうと思います。テキストは岩波文庫の野矢茂樹訳『論理哲学論考』を、副読本は角川選書の古田徹也著『ウィトゲンシュタイン 論理哲学論考…