かるあ学習帳

この学習帳は永遠に未完成です

『美少女万華鏡 理と迷宮の少女』考察~愛は全てを繋ぐ~

『美少女万華鏡』第5話「理と迷宮の少女」は、『美少女万華鏡』シリーズの最終話です。この第5話は最終話なだけあってシナリオがかなり長く、内容もシリーズの集大成として申し分無い出来でした。ただ、話が長めなぶんだけプレイしていて若干ダレる所があり…

『美少女万華鏡 罪と罰の少女』考察~父殺しの天才~

『美少女万華鏡』第4話「罪と罰の少女」は、全5話の中で一番完成度が高いと思います。美少女ゲームの中にはしばしば並の純文学よりも大きな感動を与える作品が存在しますが、この第4話はまさしくその典型だと思います。中原中也やドストエフスキー、ランボー…

『美少女万華鏡 神が造りたもうた少女たち』考察~有限性の後で~

『美少女万華鏡』第3話「神が造りたもうた少女たち」の舞台は、パンデミックによる滅亡を迎えた後の未来の世界です。コロナ禍が発生するよりも前の2015年に発売されたのに、先見の明が感じられる作品ですね。全5話のうち、この第3話だけ世界観が極度のSF寄り…

『美少女万華鏡 忘れな草と永遠の少女』考察~抑圧されたものの回帰~

今回は『美少女万華鏡』第2話「忘れな草と永遠の少女」を考察します。第2話は第1話と比べて明らかにシナリオが高度になっています。しかし、第2話でも「万華鏡を覗く夏彦が永遠の快楽の世界の片鱗をひとときだけ体験する」という定石は維持されていました。…

『美少女万華鏡 呪われし伝説の少女』考察~ひとときの永遠~

『美少女万華鏡』は、テン年代を代表する美少女ゲームです。このゲームは全5話からなる作品ですが、分割商法により一話ずつ断続的に発売されました。このゲームの特色は、話数が進むにつれてシナリオがどんどん高度になっていく所です。私はこのゲームのシナ…

東浩紀『存在論的、郵便的』第一章の感想と要約

私は今、東浩紀の博士論文『存在論的、郵便的』を読んでいる。とりあえず第一章「幽霊に憑かれた哲学」を読み終わったので、勉強用に書いた感想と要約をここに晒しておく。私は在野のオタクに過ぎないので、感想と要約に変な箇所があっても許してクレメンス…

三島由紀夫「一九七〇年 富士山麓の兵舎より」解説と考察みたいなもの

『新潮』とかいう雑誌の5月号に、三島由紀夫が川端康成に送った手紙が掲載されていた。三島由紀夫は『豊饒の海』という不可解な小説を書いた後、これまた不可解な理由で切腹自殺したことで知られる文豪である。しかし、今回の『新潮』に載せられた手紙を補助…

「ポケモン!きみにきめた!」批評~遅刻から始まる冒険~

www.youtube.com 今回はTVアニメ版ポケモン第1話「ポケモン!きみにきめた!」を批評します。この記念すべき第1話では主人公・サトシとピカチュウの出会いが描かれるのですが、今観ても面白いお話ですねー。特に、「原作ゲームのシナリオとは大幅に異なる脚…

人形の頭髪と材質を語る男。

私は今年の1月、人形を買いました。 この人形の名前は無為美(むいみ)ちゃんと言います。 (命名したのは私) 今回は人形のウィッグと材質について書いてみようと思います。

『青い空のカミュ』超考察~表層の偶然/深層の必然~

『青い空のカミュ』 シナリオ・原画:〆鯖コハダ (C)KAI 2019年3月29日発売 私たちKAIは美少女ゲームが持つ表現性を追求したく。 新たなプロダクトをスタートします。 l'art de la fille アートとしての美少女ゲームをKAIは創造します。 (KAI公式HPより) …

中村文則『悪意の手記』感想や解説みたいなもの

中村文則は、「土の中の子供」と大体同時期に『悪意の手記』とかいう小説を世に送り出した。「土の中の子供」は芥川賞受賞作なのだが、『悪意の手記』は何の賞も受賞していない。しかし、「土の中の子供」よりも『悪意の手記』の方が面白いと私は感じた。な…

『呪術廻戦0』超考察~愛は生を祝福する~

『呪術廻戦0』は呪術師たちの戦いを描いた漫画で、作品の仕様上「呪い」がテーマになっている。しかしこの漫画では、「呪い」だけでなく「祝福」も描かれていると思う。『呪術廻戦0』は、里香に生を「祝福された」乙骨憂太が、自己の生を「祝福する」ように…

中村文則「土の中の子供」感想や考察みたいなもの

「土の中の子供」は、中村文則の芥川賞受賞作である。中村文則は日本人初のDavid L. Goodis賞受賞者であり、ウォールストリートジャーナルで絶賛されてもいて、海外での評価が高く優秀な作家である。しかしその割には、日本における彼の存在感はちょっと地味…

へそくりを貯めて買った人形に服を着せた男。

オリンピックが終わり、人形の時代が始まる。(挨拶) 私は前回、大勢の人々にドン引きされる覚悟で人形の話をしてみたのですが、記事を書いた結果ドン引きされるどころか却って好意的な反響を多く頂きました。 人形の話には思った以上に需要がありそうなの…

へそくりを貯めて人形を買った男。

唐突ですが、今回は人形の話をします。 球体関節人形が苦手な人は見るなよ??絶対に見るなよ??? (とか言いつつ、内心では色んな人に続きを見て欲しい)

『魔女こいにっき』感想と考察~夢を砕かれたなら物語ればいい~

しかし選ばなければならない。生きるか、物語るかだ。(ジャン=ポール・サルトル『嘔吐』より) 『魔女こいにっき』 シナリオ:新島夕、博恵夏樹、佐藤礼 原画:狗神煌、朝倉はやて、小桜りょう、白もち桜 (C)Qoobrand 2014年5月30日発売 今回は『魔女こいに…

サルトル『嘔吐』考察や解説みたいなもの

『嘔吐』は、サルトルとかいう昔流行った文豪の代表作である。この小説は現実世界の偶然性を表現していることで有名なのだが、フィクションの必然性を表現した小説でもある。私の個人的な興味では、現実世界の偶然性よりもフィクションの必然性の方に惹かれ…

大江健三郎『M/Tと森のフシギの物語』感想や解説みたいなもの

『M/Tと森のフシギの物語』 大江健三郎 岩波文庫 2014年9月17日発行 河合隼雄(1928~2007) 母性はすべてのものを全体として包みこむ機能をもつのに対して、父性は物事を切断し分離してゆく機能をもっている。*1 河合隼雄によれば、母性は「全体として包む」性…

ファイアーエムブレム『新暗黒竜』から『エコーズ』までの歴史を語る

私はニンテンドースイッチを持っていない。だから私はファイアーエムブレム『風花雪月』をプレイした事が無い。私は未だにニンテンドー3DSを乱用している。ファイアーエムブレム(以下FE)をプレイするのが楽しく、『新暗黒竜』『新紋章』『覚醒』『白夜/暗…

宮沢賢治「よだかの星」のあらすじと解説(改訂版)

今回は宮沢賢治の名作「よだかの星」を考察します。子供向けの柔らかい文体で書いてある割には何となくわかりにくい宮沢賢治の小説を、早速分析していきましょう。 「よだかの星」(『銀河鉄道の夜』所収) 宮沢賢治 新潮文庫 1989年初版発行 あらすじ では…

「インテリがアイドルを研究し、アイドルが文学者になる時代」の誕生。

エンタメ消費の高レベル化が止まらない kansyomazo.booth.pm note.com ここ最近になってから、オタク文化評論界隈の高学歴化が急激に加速していると思う。例えば「大阪大学感傷マゾ研究会」「早稲田大学負けヒロイン研究会」とか言った「研究団体」が、Twitt…

今年の抱負~「連撃のブログ」から「一撃のブログ」へ~

あけましておめでとうございます。 今年の私の抱負は、「ブログの更新頻度を減らし、代わりに記事の質を向上させる」というものだ。クオリティにムラがある記事を連発するのではなく、良質な記事を一発また一発と確実に撃ち込んでいこうと思っている。即ち、…

ペヤングやきそばと最後の挨拶

www.youtube.com フルヘッヘッヘッヘッヘッ!(挨拶) オッス!オラ管理人! 唐突ですが、今年のブログ記事は今回で最後にしようと思います。 次回の更新は、おそらく来年のお正月になるでしょう。 (ふーん) 今、何となく「ふーん」って声が聞こえた気がす…

ポケモン映画の歴史を語る~『ミュウツーの逆襲』から『ココ』まで~

自分のブログだから思い切ったことを言わせて下さい。ポケモンは「ヤマト」「ガンダム」「エヴァ」に続く「第四の社会現象」だと私は思っています。SF色の強い「ヤマト」「ガンダム」「エヴァ」とポケモンは作風が異なりますが、ポケモンというコンテンツは9…

『幻影の覇者ゾロアーク』批評~映像は映像を語る~

『幻影の覇者ゾロアーク』(以下『幻影の覇者』)は、ポケモン映画第13作品です。端的に言って、この映画は傑作だと思う。この作品は映画という映像メディアであり、尚且つ映像倫理について考えさせられる物語でもあります。『幻影の覇者』は、言わば「映像…

『ポケットモンスター ココ』批評~野生児は未来を目指す~

『ポケットモンスター ココ』(以下『ココ』)は、ポケモン映画第23作品です。この映画は「野生児と野生ポケモンの共存」という異色のシチュエーションで始まります。ですが、話が進むにつれて自然環境を破壊する悪役が現れ、従来のポケモン映画でも見たこと…

『ビクティニと白き英雄レシラム』批評~現実という大地を生きろ~

『ビクティニと白き英雄レシラム』(以下『白き英雄』)は、ポケモン映画第14作品です。この映画では「海」と「空」と「大地」に象徴的な意味が付与されていると思いました。なお、『ビクティニと白き英雄レシラム』は『ビクティニと黒き英雄ゼクロム』と同…

『ポケットモンスター みんなの物語』批評~2つのアンサー~

『ポケットモンスター みんなの物語』(以下『みんなの物語』)は、ポケモン映画第21作品です。『みんなの物語』では、フウラシティという街で6人の個性的な主役が活躍します。ラルゴ、リサ、トリト、カガチ、ヒスイ、そして相変わらずの主人公サトシ。この…

『破壊の繭とディアンシー』批評~関係性のダイナミズム~

『破壊の繭とディアンシー』(以下『破壊の繭』)は、ポケモン映画第17作品です。『破壊の繭』は、長らくポケモン映画の脚本を務めてきた園田英樹さん最後の長編ポケモン映画です。結論から先に言うと、この映画は非常に優秀な群像劇で、園田さんは最後に凄…

萩原朔太郎「ばくてりやの世界」解説

萩原朔太郎ってどんな人? 萩原朔太郎は日本の代表的な詩人です。朔太郎は前橋中学を卒業した後で熊本の五高、岡山の六高、慶応大学に入学しては退学を繰り返した経歴を持ちます。色々な事情で大日本農学校、京都大学、早稲田大学に入学するのに失敗したこと…